プカプカ80・Oct-25-2008 |
北の浜辺でベンサスに逢う 鈴木明彦 9月に入っても25℃を超える日が続いています。しかし、アカトンボが目立つようになり、ナナカマドの実も赤く色づいていますので、秋は近いような気がします。先日久しぶりに望来海岸を訪れたところ、ベンサスを拾いましたので紹介します。 望来海岸は、漂着物探しのほかに地層見学や化石採集でも訪れる機会があり, 私には身近なフィールドのひとつです。いつもながら貝殻をメインに漂着物採集をしていましたが、あまり目ぼしいものはなく、しばらくメノウ探しに興じようかと海岸の奥に移動しました。すると見慣れた場所に砂がたまっていて、砂の中に丸いものが半分埋っていました。このあたりは化石を含むノジュール(石灰質団塊)が多いところでもあります。ばかに形のよいノジュールだなと思って近寄って見ると、それは巨大なガラス玉でした(図1,2)。 一部に小さなヒビがありましたが、ほぼ完全なものです。ガラスの中には黄色いラベルが貼ってありました(図3)。1時間ほどかけてクルマまで運びましたが、おかげで翌日は腰痛気味になりました。 以前加藤さんが沖縄で採集されたのと同じようなものです(プカプカ通信54号参照)。北や南の端っこにはこんな物が流れ着くこともあるのですね。私は浮子にはあまり興味がないので、地元 の志賀健司さんに引き取ってもらいました。現物が見たい方は、いしかり砂丘の風 資料館をお訪ね下さい。たぶんどこかに鎮座しているはずです 伊良湖の漂着物学会へどうぞ! はやししげお 10月の25、26日は、石井会長のたっての願いであった愛知・伊良湖大会が開かれます。今回の実行委員長は、地元で顔の広い牧野さんが快く引き受けて下さったので、わたしは発表をすることになりました。伊良湖岬周辺、渥美半島の漂着物をスライドショーでお楽しみいただきたいと思っています。 さて、夏も終わり9月になった最初の土曜日、秋の総会チラシを配りがてら、渥美半島に出かけました。 豊橋市の浜・東伊古部から歩き始めたのですが、浜近くの道路はサーファーたちでごった返し、道の両側に駐車の車が列をなし手、ビーチコーミングできる様子ではありませんでした。この調子では赤羽根ロングビーチも同様だろうと諦め、渥美の堀切に向かいました。ところが堀切ではパーティションが置かれ、浜に行かれません。 これは翌日に迫ったトライアスロン大会のために水道を自転車道路まで引き込む工事などが行われていたのでした。 もうそうなれば、浜歩きのできそうなのは観光地・恋路ヶ浜しかありません。ちょっと早めの昼食を田原屋さんでとることにしました。田原屋さんのご主人は浜歩きがご趣味で、これまでに集められた漂着物を店の駐車場、店先、店内に飾られています。ここにもチラシを置かせてもらい、いつもの大アサリ定食を食べた後は恋路ヶ浜に繰り出しました。 午前中は曇りがちだった天気も回復し、まだまだ暑い日ざしがガンガン照りつける恋路ヶ浜、西から東に向かって満潮線に沿って歩き出したら、ポツポツとギンカクラゲの漂着がありました。 そんなに期待はしていなかったのですが、駐車場正面あたりに来たら、波に乗ってギンカクラゲが次々と寄っています。潮の具合も、ちょうど満潮から引きはじめたあたりでタイミングも良かったのでしょう。満潮線沿いにギンカクラゲが続々と増えていきました。 ギンカクラゲの写真を撮っていたら、さいきんネットで話題になった金色をした金貨クラゲがいるではありませんか。それも一つや二つではありません。ずっと前に青い触手が褪色し黄緑色っぽくなったギンカクラゲは見たことがあったのですが、濃い黄色(金色)の触手を持ったギンカクラゲを見たのは初めてで興奮してしまいました。 この日は時間に余裕があったので、ギンカクラゲのカウントをしてみました。 任意の満潮線10メートルにそって漂着した74個のギンカクラゲを触手の色ごとに数えてみました。右横にあるのは、その範囲内で漂着したカツオノエボシの個体数です。 青い触手55、黄緑っぽい触手3、黄色い触手11、円盤だけ5、カツオノエボシ12、 こうしてみると、黄色い触手のギンカクラゲが15%ほどを占めているのはとても驚きでした。黄色い触手になった原因は分かりませんが、エージングによる褪色だけとも思えない濃い鮮やかな色をしていました。 ギンカクラゲと同様に、海面を浮遊するクラゲには、浮力体を持つカツオノエボシと、帆を持つカツオノカンムリがいます。カウントをした範囲では12個しか見られなかったカツオノエボシですが、恋路ヶ浜全体では、膨大な量にのぼりました。ただ、カツオノカンムリの漂着は少なく、1個体を見ただけでした。 さて、こうした浮遊性のクラゲを餌にするルリガイの仲間たちも一緒に漂着をしていました。紫色の小さな巻貝、ルリガイを見つけるとワクワクするものですが、ギンカクラゲと同様に漂着してくるほとんどのルリガイには浮力体が付いており、これが見られたのは収穫でした。 そして、この日見つけたルリガイ類は、ルリガイ、アサガオガイ、ヒメルリガイ、それに何とハブタエルリガイという豪華なもの。それにサプライズは初めて見つけたヒルガオガイでした。この5種類の貝全て浮力体も一緒に見られたのは、嬉しかったですね。 さて、この日の伊良湖で見られたものは浮遊性のクラゲと貝類だけではありませんでした。海豆類も期待していたのですが、漂着していたのはゴバンノアシの破片、それにシナアブラギリでした。 シナアブラギリは近年中部地方では漂着が多く、日本海側でも太平洋側でも普通に見られるようになってきました。 諦めきれずに汀線に沿って歩いていたら、10メートルほど先にココヤシが打ち上がるところで、浜の斜面を転がっていました。 走りよって写真を撮り、近づくと発芽孔のあたりにカニがしがみついています。ココヤシが転がっても、落ちる様子も無く、しっかり離れずにいました。もしかしてコレは、コロンブスで有名になったオキナガレガニの仲間かと思いましたが、見たら形が違います。後で調べたらイボショウジンガニで、やはり漂流物と一緒に旅をするカニのようです。ココヤシに乗ったのは、いつのことなのでしょうか? 打ち上げられたばかりのココヤシはずっしり重く、ルリガイなども容器に溢れてきましたので、車に戻って荷物を置き、ちょっと休憩です。 これだけの収穫があれば十分満足で、家路を急いでもよかったのですが、まだ何か気になって(欲深いしね・・・)浜に戻りました。 ギンカクラゲの漂着は、ほぼ終わっていましたが、大きな浮力体をくっつけたままのルリガイがぼちぼち漂着するので、浜の寄りやすい所を2~3往復し、拾っていたところカルエボシが付着したモモタマナが寄ってきました。 これに気を良くして、もう一度浜を歩こうと、西のほうから東に向かって歩き始めました。観光に来ている方々から見れば、何度も何度も浜を往復している怪しいオッサンでしょうね。 寄りやすい浜を過ぎテトラの見えている東方の浜に来たとき、一瞬目を疑いました。3メートルほど先にモダマが打ち上げられる瞬間でした。大き目の波によって跳ね飛ばされるように新しい満潮線の上にモダマが置いていかれたのでした。 気を静めて写真を数枚撮り、それから手を伸ばしてモダマを手にしました。コケムシやエボシガイがいっぱい付着したこのモダマ、実はわたしが太平洋側ではじめて拾ったモダマだったのです。 これまでにモダマはいくつか拾っていますが、それは全て越前や若狭の日本海側でした。そんなわけで太平洋側ではじめてのモダマを拾い、この日は久しぶりに雄叫びをあげてしまいましたよ。 |
by uki-puka
| 2008-10-23 21:20
| プカプカ通信
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