プカプカ通信153 ・ May -25-2016 |
さようなら! 陶片名人 久保さん! 鈴木明彦 五月半ばのとある夜、横浜の京馬伸子さんから広島の陶片名人の久保公子さんが亡くなられたとのメールが届き、大変驚きました。わたしよりも若干お若いはずなので、五十代半ばではないでしょうか。ここ五年くらいは、漂着物学会の大会でお会いする機会はなかったのですが、陶片ブログやプカプカ通信を拝見していたので、お元気であろうと思っていました。おそらく退職後は、膨大に集められた陶片を整理されるつもりだったのではないでしょうか。これらの研究成果を学会誌や会報にまとまったかたちで書いていただけなかったのは残念でした。 貝がらや石ころに興味があるわたしには、まったく不案内のジャンルが陶器や硝子瓶でした。特に陶片となれば、訳のわからない欠片で、石の方が価値があるだろう(失礼!)と思っていました。しかし、わたしにとってまったく関心のない陶片でも、久保さんの手にかかると見る間に出自が判明し、貴重なお宝のように思えてくるのでした。差し出された陶片を次々と同定してゆく久保さんの知識にはいつも驚いたものです。久保さんの貴重な陶片コレクションが何かの機会に公開されることを願って、追悼の言葉といたします。 惜別 陶片狂さん はやししげお 去る2016年5月6日、陶片狂こと久保公子さんが急性心不全のため、ご逝去されました。今年還暦を迎えた私よりも少し若い久保さんの訃報を聞き、驚くとともに、まだまだやってほしいことがあったという思いも入り混じり、寂しい思いでおります。 久保さんは漂着物学会初期、そしてウキウキ研究会も初期からのメンバーで、ネットでは早くからホームページ「陶片窟」を立ち上げ、漂着物の中の陶片にスポットライトを当ててみえました。身近な広島の陶片収集から始まり、その分類や分析も行われ、焼き物の産地にも何度も足を運ばれ、研究をつづけられました。そんな陶片のエキスパートの急逝は、「困ったときの陶片狂頼み!」ができなくなったわけで、多くの漂着物愛好家が、残念に思っているはずでしょう。 上の写真は2004年11月、京都府京丹後市琴引き浜で行われた漂着物学会・丹後大会のものです。写真は右から久保さん、鈴木先生、小林さん、エマさん、田中副会長です。確かこの日は紅皿を見つけられ、喜ばれていた記憶があります。 久保さんは陶片窟をはじめネットを中心に陶片の情報をアップされてきましたが、紙媒体もいくつかありますのでその一部を紹介します。 ・漂着物考-浜辺のミュージアム INAX 2003 共著:石井忠、中西弘樹、久保公子他 イナックスの漂着物考展の図録 ・水辺の陶磁器-広島県の海岸と河川を中心に-アジア水中考古学研究所,有田町歴史民俗資料館 2010 宮島の大鳥居の下で陶片を拾ったことをきっかけとして,広島の海岸や川で16世紀から19世紀の陶磁器の破片を拾い集めるようになった久保公子さんのコレクションを,採集場所別に,陶器の種類ごとに分類して写真で紹介している。巻末の「陶片採集記」には,陶片拾いの楽しさが綴られている。 ・プカプカ通信 No18 2003ろくでもないメッセージつきの浮子、No23 2004 島根県浜田市国府海岸の浮子製人形、 No50 2006 漂着玩具たち、 No55 2006 陶片と浮子の町、鞆港、 No59 2006 広島のガラス浮子と石製沈子、 No74 2008 福山市鞆,架橋計画による埋立て予定地の堆積物、 No139 2015 ウキアートの島,小豆島で陶片拾い ・資料提供 ・福井県の海底文化財に関する調査 佐々木達夫, 田中照久, 田﨑稔也, 渡邉玲 金大考古 69,1-13 2011 ・新潟県の海底文化財に関する調査 佐々木達夫、田﨑稔也、渡邉玲 金大考古 69,14-34 2011 ・島根県・山口県の海の文化遺産に係わる資料 佐々木 達夫、佐々木花江 金大考古 71 2011, 14-34. ○ これまでに久保さんと関わられた方々から、お悔みのメッセージや追悼文を頂いているので、順不同で紹介します。 突然のことで信じられず、胸が塞がれる思いです。 19日夜にKさんからのメールで知りました。5月6日午後9時、急性心筋梗塞だったそうですね。 このところブログの更新がされていないことが気がかりでした。仕事が忙しいのかな?パソコンの調子が悪いのかな?それとも調子が悪いのは人の方だったりしないのかな?と手紙を書き、のらつうしんにGWに道北で拾ってきた陶片も入れ、封をしたのが19日でした。翌日には投函するつもりでした。 私が久保さんを知ったのはINAX出版の『漂着物考』だったと思います。上手な文章を書く人だな~と思いました。 えりも大会懇親会の久保さんを思い出します。失礼な写真を撮った私に、「学生の時に楽しめなかった修学旅行の楽しさを味わった。楽しかった。」と言ってくださいました。 当時ブログを見られなかった私に、久保さんは見てもらいたいからと言って、長い間わざわざプリントアウトしたものを送ってくださいました。資料や本が送られてくることもよくありました。ある時は『ごりらのはなくそ』なんていう御菓子もいただきました。 もちろん陶片の鑑定ではとてもお世話になりました。 黒くて艶のある虫〇キブリが大の苦手だった彼女。絵やその名の文字を見るのもダメだった。それなのに通勤途中で見た気持ちの悪い虫の写真が送られてきて「これは何?」なんていうこともありました(笑)。 のらつうしんを送るとメールや手紙で妄想いっぱいの感想をくださいました。前回は鳥の羽が欲しいと言うので送りました。お互いに好奇心旺盛で楽しめましたね。 彼女の職場の机の引き出しや、通勤着のポケットには今も陶片が入ったままではないかしら? 亡くなったことが、とても残念でなりません。多分これから先に時間ができたら、それまでの成果をまとめてと思っていたことでしょう。誰もがそう信じていたのに。早すぎましたね。 ねえ~久保さん、多分自分が亡くなったことに気づいていないんじゃない?みんなも信じられないでいるんですよ~。 今度の大会の時に、こそっと現れたりしませんか? 中司 光子 久保さんへは、「去年の11月に岡山に越してきましたのでよろしくお願いします」と与那国島で拾った陶片を送ったり、お返事をいただいたりして年賀状までは、やり取りをしていたのですが、 しばらく連絡をしてませんでした。 5月8日ぐらいだったと思います。友人と久保さんの話をしてたんです。 そろそろお手紙しようかな。と思っていたところでした。 しんじられません! 毎年学会のときにお会いできるのをとても楽しみにしてました。 拾われた陶片のお話をお聞きするのもとても楽しみでした。 優しく微笑んで、陶片のこととても深く篤く話してくださいました。 おちゃめな面も。 そして私の種の話やガラスの瓶や、おもちゃの話も受け止めてくださいました。 最近の久保さんからの贈り物は何とロケットのフェアリングでした。 いつもいっぱい気にかけてもらい嬉しかったです。 まだ何も受け止められません。 でも大好きな陶片の中にいらっしゃることはまちがいないです。 ご冥福を ユキ Please forgive this clumsy, English message; it’s written in great shock, with deepest sympathy for the bereaved family. Kubo-san inspired me immensely, through her amazing knowledge, passion, wit, and generosity. I wish I could have told her how much happiness she brought, and… I expect we all feel the same. Here is Kubo-san last autumn – beachcombing into the sunset: …What a devastating loss to everyone this is. Emma L (miniature.stone@gmail.com) この不器用な、英語のメッセージを許してください。それは、大きなショックを受け書いたもので、ご遺族のための深い同情をこめています。 久保さんは、彼女の驚くべき知識、情熱、ウィット、そして寛大さをもって、私に大きなインスピレーションを与えてくれました。私は彼女がもたらしてくれたことで、どれだけ幸せになれたかと、彼女に伝えたいのです... それはきっと皆が同じ気持ちでいるはずです。 これは久保さんが昨年秋に夕日を浴びてビーチコーミングしていたところです。 ...これは、皆にとって非常に大きな損失でしょう。 エマ・ロングホーン 陶片狂さんの訃報を聞き、突然のことで驚いています。 学会でお会いしたのは、おそらく東京・神奈川大会が最後ではないかと思います。 その時も、陶片狂さんは、陶片にかける情熱、熱い語りとユーモアで、わたしに陶片の魅力を語ってくれたのを思い出します。 陶片狂さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。 石川慎也 久保さんが亡くなられたことを聞き、言葉もなく涙が止まりません。 手紙や資料をお送りしても、音沙汰がないのでおかしいなあと思い、 携帯にメールを送ったら戻ってきてしまい、体調を崩しているのではと 心配していたところでした。 以前久保さんから「あまり体が丈夫ではないし、いつまで元気に陶片を拾いに出かけられるかわからないから拾いに行けるときにひろっておこうと思って。集めたものの整理はいつでもできるから」と聞いたことがあります。 なんどかご自宅に泊めていただいたこともありますがここしばらく漂着物学会にはいらしていなかったので会いたいなあと思っていました。 あの膨大な陶片についての知識、とことん調べる熱情、そしておかしみたっぷりの名文。彼女からのメールや手紙は本当に楽しみでした。鞆の浦などの陶片拾いをご一緒したこと、自宅近くの川のそばを歩きながら【この川でだけは拾うな(ご近所の目が…)】とご両親に言われていると聞いたこと、夜通しコレクションを見せてもらったことなど、思い出はつきません。 小島あずさ 久保さんの突然の訃報にびっくりいたしました。しばらくお会いしてないので、今年の北海道大会にぜひ来ていただきたいと思っておりました。お願い事もいっぱいあったのに、残念です。初めて参加した京都丹後大会で民宿に入ると「こんにちはわ~」と言って玄関に出てきた久保さんを民宿のおかみさんと思い込んだことが思い出されます。横浜やえりもでも楽しい時を過ごさせていただきました。心よりご冥福をお祈りいたします。 田中正人 . |
by uki-puka
| 2016-05-25 07:47
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