プカプカ通信136 ・ Nov-12-2014 |
敦賀市で見つけた木製浮き はやししげお 秋も深まってまいりました。今年は漂着物学会が念願の沖縄、それも石垣島で行われました。これは石井先生もずっと願われていたことです。そんな大会にはぜひとも参加したかったのですが、仕事の都合でいけずじまい・・・残念!きっと石垣島の報告は,ウキウキの誰かが報告してくれるでしょう。 さて、この秋になり太平洋側からシフトして日本海側を歩くようになりましたが、最近は越前と呼ばれる福井県の北部よりも、若狭と呼ばれる南部を中心に歩くようになりました。若狭地方は沈水地形と言われるリアス式海岸が続き、越前の三里浜や浜地以北のような広い砂浜は無く、ほとんどがポケットビーチです。それでも、複雑な地形によって漂着物が分級化(ソート・よりわけ)されて打ちあがるために、探し物を見つけやすいことも分かってきました。 10月末に出かけた敦賀市の杉津・横浜海岸は、敦賀市中心部から北へおよそ10kmほどに位置します。杉津は陸けい島の地形で、その様子は北陸自動車道の杉津(すいず)パーキングエリアから、眼下に望むことができます。写真中央の黒っぽい島が元の島で、海岸の近くに島があると沖からの波が島の沖側で打ち消しあうことになり、波の静かになった部分へ沿岸流が砂を運び、堆積していきます。そうしてできた砂洲が成長して陸続きの陸けい島となります。この写真にもその様子は表れており、元の島の右手前には砂が堆積した様子がうかがえます。この砂地が続くことで、杉津の横浜海岸は漂着物が寄ることになります。写真で島の上まで伸びているのは敦賀半島です。杉津・横浜海岸は敦賀湾の開口部にあり、北西の季節風が吹けば、新鮮な漂流物が寄ってきますので、湾内だけでなく、日本海を漂流中のモノも多く入ってきます。 そんな例は植物種子にも見られ、冬の間にグンバイヒルガオやらヒレガクアサガオの種子が漂着します。こうした種子は小さくて目立たないので、ビーチコーミングで見つかることはまずありません。けれども、種子が芽吹いて成長すれば、葉を伸ばし花を咲かせるので知ることができます。杉津・横浜海岸ではこれまでにグンバイヒルガオの開花とともに、ヒレガクアサガオの開化も確認されています。 そんなわけで、今年はどうかと楽しみにしていましたが、グンバイヒルガオの開花は見られませんでした。けれども、昨年に引き続きヒレガクアサガオ Ipomoea fimbriosepalaの開花を見ることができました。グンバイヒルガオとともに福井県でも近年確認されているヒレガクアサガオですが、1970年10月に新潟県の粟島での記録ありますから、かなり昔から種子が漂流し,各地で発芽していたのですね。去年は台風到来でだめになってしまいましたが、この秋は今のところ持ちこたえているようなので、結実するまでがんばってもらいたいと思っています。 さて、この海岸で久しぶりに木製のウキを拾いました。ウキは軽いアシやら植物片、それに細かな流木などが打ち上がった漂着ラインで見つかりました。 ウキは木製で、漁師さんの手作りのものと思われました。このウキは乾燥重量33g、直径が33mmほどで、全長が135mmの円筒形をしたものでした。写真にあるようにウキはやや湾曲しており、これは素材に使った材が湾曲していたためでしょう。素材に使われたのは浮きの小口断面から見える環孔材の特徴などから、ウルシ(漆)材でしょう。 このウキは、ウルシの太い枝を切り出し、樹皮を剥いた後で表面を整え、両端の小口部分は、切り落とし出はなく、縁を斜めに刻んであり、これは網や漁の獲物を傷つけないための工夫でしょう。また小口に近い部分に浮子綱(あばづな)へ結わえるための刻みを刃物で一周させてあります。それに一周した刻みの中央部には、円柱の中心を通る細い穴を貫通させてあるものでした。こうした加工によって、このウキは浮子綱への固定を確実とするだけでなく、浮子綱の上で移動しにくくなって安定し、網を扱う作業性の向上に寄与したものでしょう。 最近は、プラスチックウキの漂着がほとんどで、こうしたウキの漂着はとんと見てなかったので嬉しかったです。また、このウキは劣化がほとんど無く、良い状態で打ちあがっていたので、敦賀近隣の漁師さんの作られたものが短期間の漂流の後に打ち上げられたモノでしょう。まだこうした技術のある漁師さんがウルシの木を削ってウキを作られているのを知って、よけいに嬉しい気持ちになりました。 このウキは、形状などから刺し網に使用したものと思われます。刺し網はクルマエビ漁や、イセエビ漁などに使われるものは、もっと細く浮力の弱いものが使われるので、浮力の強いこのウキはもっと粗い網に使われるものと考えています。 カエルウキに乗ったカメ はやししげお 福井県美浜町の松原海岸で、この秋にはカツオノカンムリを見かけました。 カツオノカンムリは「ホネ」になった状態で打ちあがっていました。 |
by uki-puka
| 2014-11-12 00:00
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